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TAKUYA HANE

霞が関の変革|縦割り行政からの脱却を


■トランスフォームする政府

〜 Open Innovation HR Training by Lee Hoi Leong at Japanese ministry〜 

昨日は、金融庁と経産省のオープンイノベーション(以下、OI)研修。

企業間でのOI研修は、今やトレンドとも言えるほどになってきており、毎月のようにどこかでやらせていただいている。

しかし、公的機関同士、公的機関と民間でのOIをやってほしいというのは初めてだった。

ついに公的機関も、縦割りから飛び出そうとしているのかとうれしく思った。

今回は経産省のキーパーソン、畑田康二郎さんと金融庁の若手職員が、こういうことをやるべきだよねと話し合い、省庁を超えての研修という流れが作られたという。

■金融庁の改革の必要性

金融庁といえば、「倍返しだ!」で有名になったテレビドラマ「半沢直樹」で、片岡愛之助が演じる金融庁役人で有名になった。

無慈悲に銀行に無理難題を言いつけるシーンが番組を盛り上げた。

もちろんテレビ的にデフォルメがかけられていたわけだが、銀行や保険などの金融商品等を監督、指導する公的機関であることは間違いない。

しかし、仮想通貨などの登場で、今後、銀行への指導という形も大きく様変わりをするかもしれない。

そうした現状では、柔軟性、新しいことを他の分野の人から学び、協業する姿勢が欠かせない。

そこで、異業種ながらも遠からずの経産省との研修から始め、徐々に一般企業との合同研修まで視野に入れてやっていきたいのだという。

これは素晴らしい取り組みだと思った。

これまでの日本の公的機関には柔軟性はほとんど感じられなかった。

そうした風土に風穴を開けたいというのであれば、喜んでお手伝いをしようと思った。

最新のICO(仮想通貨での資金調達)の動きなども考えると、金融庁や経産省の若手官僚は新しい動きをしっかりと学んでおくべきだ。

■まずは羽根の講演

研修一回目は、僕が講師だった。完全自動車の世界的な動向などをお伝えしつつ、世界はこんなに動き始めてますよ、日本も動かないとまずいですよと「開脳」させてもらった。

さらにはOI型につながる思考法のトレーニング。

当たり前の結論に満足せず、もう一歩先まで思考を回転させる、アクティブラーニングの定番メソッドだ。

僕らの研修はただ話をするだけではない。持ち帰れるトレーニングを提供することが重要だと考えている。

そして今回、2回目はさらに面白い講師を準備した。

今年9月より、アクティブラーニング社に入ってくれた、元シンガポール官僚、リー・ホイリョンの投入だ。

■元シンガポール政府官僚が生で伝えるリノベーション

リーさんは、新卒でシンガポールの公務員になり、昨年まで現役で働いていた。

だからシンガポール政府がどういった戦略で国を運営しているのか、シンガポールの公務員がどういった働き方をしているのかを知り尽くしている。

リーさんの公演のタイトルは、「シンガポール政府のイノベーション」。

なぜシンガポールはあれほどドラスティックなことができるのかを内側から解き明かしてもらうという内容だ。

いやー、これが実に面白かった。

やっぱシンガポール、すごいわ、という感じ。

■縦割りを解消する取り組み

シンガポール政府には「Whole of Government Thinking」と言う考え方がある。

政府全体で考えようと言うフィロソフィーといってもいい。

日本の施策を見ているとどうしてもタテ割りになっている。

文科省は文科省、総務省は総務省だ。

だから地方創生の取り組みを見ていても、経産省と厚労省と国土交通省で似たようなものがいっぱいあり、

かつ、互いに縄張りのようなものがあるため踏み込めないといった無駄がいっぱいある。

シンガポールでは、そうしたことを防ぐために、省庁をまたいだ横断的なプロジェクトを次々と展開している。

■あの植物園を作ったのも、共同プロジェクト

例えば、あの有名なGardens By the Bay。マリナベイサンズの隣にある世界有数の植物園だ。

世界中の植物園を訪問して面白いと思ったところはここしかない。

こちら、実は都市開発庁(URA)と国家公園庁(N-Parks)と観光庁(STB)の共同プロジェクトだとリーさんが説明してくれた。

つまり、市民の憩いの場所である公園を作る時に、ただの公園ではなく、これを意図的に観光の名所にもなるような開発をできないのか?と考えたのだ。

そうなると、周辺の観光施設、ホテルなどとの連携も欠かせない。

そこで、都市開発庁(URA)、国家公園庁(N-Parks)、観光庁(STB)の3機関が協力しあったのだ。

結果、この施設は、今やシンガポール有数の観光スポットとなり、2012年に造成し、2015年にすでに累計2000万人の来場者数を誇るほどになった。

3年で2000万人である。

■次々作られる新省庁

「シンガポールではこの5年で、いくつぐらいの省庁、公的機関が新しくできたと思いますか?」

リーさんが問いかけた。

答えは、9である。

なんと、9つもの新しい機関が、わずか5年の間にできたというのだ。

例えば、テレコム系の発展に寄与するために「IDA」という機関があった。

一方でメディア周りの発展に寄与する「MDA」という機関があった。

しかし、Webの急速な発展で、これらの垣根を取っ払うことが急務になっていた。

そうして出来上がったのが、IMD(=Infocom Media Development)』という両者をまたがる新機関なのだ。

シンガポールは、こうした「トランスフォーム」を次々に繰り返しながら、世界の変化に対応しているのだ。

翻って日本はどうか?1950年に作った北海道開発庁。廃止したのは2001年だ。

50年も北海道を「開発」し続けてきたのだ。

そんな公的機関が日本にはいっぱいある。

■求められる政府の形とは?

"With increasing complexity, governments will also have to transform from being a direct service provider to function in a more networked manner with multiple stakeholders"

シンガポールの公務員を統括する政府関係機関のトップ、ピーター・ホの言葉である。

「複雑性が増す現代において、政府もまた移り変わらなければならない。

ただサービスを提供するといった働きから、多くの関係者をつなげていくような役割をになっていくことが求められている。」

世界の変化とこれからの政府のあり方をよく理解した言葉だと思われる。

この研修の最終回では、2050年代に世界の金融はどう変わり、日本はどういう政策を打ち出すべきかのOI発表が行われる。

金融庁と経産省の双方のメンバーで作られたチームで発表するので、OI的な新しいものが出てくることが期待されている。

昨日の研修でも、リーさんの研修の後に、中間発表が行われたが、「もう僕らが知っているようなお金や政府もなくなっているんじゃないか」と言ったぶっ飛んだ意見も出ていて、とても面白かった。

最終回がとても楽しみだ。

今回、刺激的なシンガポールの取り組みを聞いて、日本の現役官僚の皆さんも大いに刺激を受けたようだ。

研修が終了してからもリーさんの前に若い官僚が並び、質問を繰り返していた。

もっともっと時間が欲しいと言わんばかりであった。

■「企業」としても強いシンガポール政府

シンガポール政府の取り組みを紹介してくれるリーさんの研修は、これからアクティブラーニング社の重要研修になりうると確信した。

公的機関のみならず、企業にもとってもオススメの内容である。

そう、僕に言わせれば、シンガポール政府は、最強のトランスフォーム企業なのだ。

「シンガポールは、最初は日本に追いつけ、追い越せと日本を見習っていたんです。だから日本にはもっと頑張って欲しいんですよ。」

研修終了後に、リーさんが経産省の畑田さんに伝えた、嬉しくもあり、悲しくもある言葉だ。

それがいつの間には追い抜かれてしまった。

■シンガポールでのビジネスツアーを企画中

シンガポールが日本を追い抜けたのであれば、僕らもシンガポールを追いつき、追い抜くことはできる。

今、必要なのは謙虚な学ぶ姿勢である。

研修だけでは面白くないので、来年、リーさんと一緒にシンガポールを訪問するビジネスツアーを企画している。

リーさんの説明を受けながら、実際、ガーデンズ・バイザベイを回ったり、

シンガポールの公務員やビジネスパーソンとオープンイノベーション研修を現地でできたらどんなに刺激的だろうか?

僕らの来年のミッションは、日本の公的機関や企業の「トランスフォーム」をお手伝いすることだ。

2018年、日本の公的機関や企業をもう一歩先に進めるお手伝いが出来たら、こんなに嬉しいことはない。

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▼最新・オープンイノベーション研修事例 https://goo.gl/xK2nzP

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