■異種コラボでお届け
東京で、小中高生向けのActive Summer Campが始まった。先日、大阪で実施された2日間に続き、東京では5日間のコースになる。今回はなんと、吉本の現役芸人に参加していただき、特別授業を実施した。
僕の教育者としての経験は、学生の時、塾での指導から始まった。当時から思っていたことだが、子供を教えるというのは実に奥が深い。
本当の意味で子供を見事にひきつけられる人はなかなかいない。これができる人は、プレゼンテーションの基礎がしっかりできているということができる。
プレゼンの基礎は「注意喚起」である。
うまい話し手は、聞き手の注意を惹きつけるのがうまい。
「聞いて下さい」といった直接的な言葉で注意喚起するのは初歩の初歩。
実際には、音声的なアプローチ、動作によるアプローチ、道具を使ったアプローチなど、多様な方法を駆使して、聞き手の注意を惹きつける。
例えば、音声的アプローチ。
言葉に、抑揚、リズム、強弱をつけ、音自体に「物語」を埋め込まなければならない。
僕は音楽をやっていたのでよくわかるが、「注意喚起」のできる人の話し方には、音楽的要素が多分にある。オバマ大統領のスピーチは、第一級の音楽である。抑揚、リズム、強弱が素晴らしく、英語がわからなくても、いい「音」であることがわかる。
残念ながら、日本の教育では、このデリバリーの重要性が認識されていない。
美味しい料理とはどんな料理か?料理の出来は「素材×方法」で決まる。素材、つまり話の内容も重要であるが、調理方法、つまり話し方も同じくらい重要なのだ。
■お笑い芸人の底力
今回のActive Summer Campで、そのことを強く再認識できる機会があった。
今回のSummer Campに、現役の吉本芸人の方に来ていただいた。
ニブンノゴの森本さん。
初対面から「どーもー♪」っていう感じで割り込んでくる人ではなかった。どちらかというとおとなしい。しかし一度スイッチが入ると、そこは芸人だ。リアクションやツッコミで確実に笑いをとっていく。
高知の麻紀ねえさんの弟さんということで、ご紹介を頂き、今回、特別ゲストとしてご参加頂けることになった。
僕は以前から、お笑いタレントが教育に関われないかと思っていた。彼らのデリバリー力は半端ない。つまんない話でも面白くすることができる。
NHK教育は、最近、うまくお笑いタレントを使うようになっている。デリバリーが良くなれば、わかりにくいもの、おもしろくないものを面白くすることができる。
森本さんにそういう話をしたところ、是非やってみたい、勉強になるからやらせてほしいと言ってくださったのだ。
動きもいい。さすがは高知人。
Active Summer Campでは、3つの資質を鍛える
Active Learning
Team Work
Global Ability
森本さんには、Team Workのパートをお願いした。
森本さんは、笑いがおきやすいからとジェスチャーゲームをやってくださった。
ご自身が海外に行った体験談をされ、言葉なんか通じなくてもジェスチャーでなんとかなる。その時、恥ずかしいなんて思わないこと。トイレに行きたければ、恥ずかしいなんていってられない。頑張ったら通じるよと・・・。
そしてジェスチャーゲームが始まった。内容はお決まりのゲームであったが、さすがは吉本芸人。ぐいぐいと引き込んでく。そこで起きている事象について、しっかりとつっこみ、しっかりと笑いに変えていく。みんな楽しそうにジェスチャーをやっていた。
こんな学校があったら絶対に毎日行きたくなると思うなあ・・・。
お笑いタレントの中には、才能はあるのに、チャンスに恵まれず売れていない芸人、そのままやめてしまう人がいるという。実際には売れる方がはるかに難しい。
もったいない。そういう人をうまくまとめて、学校に派遣できないだろうか?
教えるのは本来の先生でいい。先生の横で、相槌をいれたり、突っ込みを入れたりする。いわゆるティーチングアシスタントの新しい形。
今回も、森本さんは、ほとんど事前の打ち合わせをしなかった。それでもきっちり、ツボを押さえたトークをしてくださった。
お笑いタレントの役割は、デリバリー力の強化だ。それだけで十分面白いクラスになっていくんじゃないかと思われる。
ただ、ここにもまだまだ広大な地平線が広がっている。ただ面白くするだけではなく、笑いや涙といった感情をうまく教育に取り込み、情緒をゆさぶるような研究がもっとなされていくべきだ。
その道は深く、まだまだ研究すべき課題が残っている。
授業が終わったら、一人の学生が森本さんにかけよった。
「僕、お笑いに興味があるんです。」
森本さんは、静かに、丁寧に質問に答えてくださった。
すごくいいことだと思う。
教育とお笑いの融合。
ここにもイノベーションがある。