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東大を目指さなくなった日本の有名中高生


■関西のトレンド

先日の7月27日28日、大阪駅前のグランフロントでActive Summer Campを実施してきた。

日本の小中高生にハーバード大生ら、北米のトップレベルの学生が直接教えるということで、当日は多くの小中高生が集まってくれた。

募集を開始したのが、1月ぐらい前のこと。応募者が増え始めてきたころ、名簿を見て、ある現象に気が付いた。

関西のトップ校の学生が異常に多いということだ。灘校を始めとする関西の有名学校の学生がずらっとリストアップされていた。

普通、こういうプログラムをやると意識の高いご両親が応募をしてくださるのだが、必ずしもそのご子息が有名校であるとは限らない。有名校もいれば、有名校でない学生もいる。

ただ、グローバル意識が高いことだけは間違いない。「ハーバード生が教える」と言われて、「海外に興味はありません」という人は来ない。何がしかの形で、海外に興味があるお子さん、あるいは親御さんがいらっしゃるのが普通だ。

しかし、今回は、ずらっと有名校の学生が並んでいた。このまま塾を開いて、東大を目指させたら結構入れられるんじゃないかというほど・・・。

 

先日、面白い話を聞いた。

誰もが知っている、東大進学率が日本トップレベルのある有名高校で、外資系企業の元社長を呼んで講演が行われた。

講演の内容は、「東大を目指すな。海外のトップ大学を狙え」といったものだった。

既に日本のトップ高校にもその意識が表れ始めているということに驚いた。

そうなってくると、日本の大学の質がどんどん落ちてくることになる。

実際、今回のサマースクールに来ている高校生がはっきりとこう言った。

「ハーバードに行きたいと思ってます。日本の大学は滑り止めです。」

僕らのサマーキャンプは、ハーバード大に入るためのテクニックを教えるといった類のものではない。

しかし、海外の大学がどういう人材を求めているのかを、肌で感じ取ってもらえるものは提供している。

今回、大阪で行った授業で、最も中高生に人気のあった授業は、科学の授業だった。遺伝子工学がいかに進んできており、ここからどういう可能性があるのかということを、ハーバードで実際にそういうクラスをとっている学生が教えてくれた。

しかし、クラスで教えたかったことは、遺伝子工学の最先端の知識ではない。遺伝子の可能性について、自分の考えをもってほしい、あるいは遺伝子に関わらず、あらゆる問題を自分の頭で考え、他の人と議論をしあう姿勢を身に着けてほしかったのだ。

授業の中では、遺伝子工学が進み、遺伝子組み換えによってもたらされる素晴らしい可能性と危険性について皆で議論しあった。

まず、クラスが始まると同時に、ジュラシックパークの最新版予告編を全員に見せた。

恐竜がものすごい勢いで襲いかかってくる迫力の映像に皆、息をのむ。

そしてこういうことが可能になる日が来ると思うかと問いかける。

皆、笑っている。

すぐに、別の映像が流される。

シベリアでマンモスの凍結死体が見つかったという映像だ。科学者はDNAを取り出せば、マンモスの再現の可能性もありうると言っている。

これはドキュメント映像だ。

毛並まで残したマンモスの子供の映像を見せられると、先ほどのジュラシックパークの映像が、あながちフィクションではなくなるんじゃないかとそんな気持ちにさせられる。

 

■正解のない問題を

ここで確信的な質問をする。

果たして、人類はマンモスを復活させるべきなのか?させるべきではないのか?

このコラムを見ている皆さんはどう応えるだろう?

こういう質問をすると、多くの日本の学生は「遺伝子を勝手にいじって、自然に逆らうべきではない」と答える。

実際、大阪でもそうだった。

「自然に逆らうことをすると、しっぺ返しを食らう可能性がある。」

と・・・。最もな答えだ。

そこで講師は問いかける。

「我々人間は、既に薬を大量に使った野菜を食べている。それはOKなのか?食べ物だけではない。風をひいても薬を飲む。これも自然的ではない。こういうこともやめるべきなのか?」

学生は答えに窮する。そこで皆に意見を問い直す。

「何万年も前の原始人のような生活に人間は戻るべきだと言う人は手をあげてくれ。それともクーラーのある部屋で生活し、かつ病気の時には薬を飲む。こういう現代的な生活をすることは悪くない。続けるべきだと言う人は手をあげて。」

多くの学生は、ちょっと答えに窮した顔になる。しかし、心苦しい顔をしながらも、現代生活にも問題はあるが、悪くはないんじゃないかと思うと答える。

「では遺伝子を触ることと、薬を飲むことは何が違うのか?」

皆、答えが出なくなってくる。

「じゃあ、質問を変えてみよう。何か身体に害があることは悪い。害がないことであれば良いというのであれば、遺伝子工学が発達し、何の副作用もないと思われる遺伝子組み変えが発見されたら、それはやってもいいのか?」

と問う。ここまで来ると、それならありかもしれないと言う学生が現れ始める。

いや、やっぱり駄目だ、という学生もいる。

その両者で、なぜありなのか、なぜだめなのかを議論させあう。

これが、いらゆる、ディスカッション型の授業、つまりはアクティブラーニングの授業なのだ。

ここで求められているのは、「正解を出すこと」ではない。議論をつめていき、自分が何にこだわっているのか?どこまで思考をめぐらせたことがあるのかを確認しているのだ。

意外に多くのことを我々は考えていない。どんな問題でも、それっぽいありがちな回答を頭の中のデータベースから取り出してそれで満足をする。

こういう思考回路を解きほぐし、さらに向こう側にある可能性について徹底して議論をするマインドセットを育てることがこのクラスの目的なのだ。

こういうことを繰り返すと、物事の見方が変わってくる。さらにもっと奥を知りたいという探究心が育ってくる。

 

このクラスを受けた中高生には、衝撃的であったらしく、皆、興奮冷めやらぬと言った感じで、クラスが終わってからもハーバードの学生らと一生懸命、議論を繰り返していた。

最終日には、遺伝子組み換えに関する最終的な自分の意見をご両親の前で発表する機会ももってもらった。

自分の考えを人前で述べる。こうした機会を、我々のサマーキャンプではとても重要視している。

大阪では1年目だったので、少々、ぎこちなかったが、これが2年目、3年目の参加者担ってくると、随分、洗練されてきて、どんどん自分の考えが人に伝えられるようになってくる。

これは、ハーバード大学の入学テクニックを教えるものではないが、明らかにグローバル人材の思考回路を身につける良いトレーニングになっている。

中高生はこんなことをやっているのだが、さすがに小学生にこの議論は難しい。

小学生にどんなことをやっているのかは、また次回に述べよう。

小学生らしい、とってもユニークなことをやっているのだ。

(次回に続く)


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