■エンタメが持つ力
さて、Nexgenの今回の目玉の一つが、After Partyだった。つまりは、本番のイベントが終わってから行われる交流会イベントのこと。
会場はNexgenメイン会場から歩いて2分のベニュー。
ここがStartupの集積地であるため、政府が人と人が交流する場になるようにと、すごくかっこいいフードコートを作ったのだ。フードコートというと安っぽく聞こえるが、実際にはすごく雰囲気のある場所で、毎晩、バンド映像が行われている。スタートアップ系イベントのAfter Partyの場所としてはこれ以上の場所はないというベニューなのだ。
ここでやることができたらと思ったのはわずか半年前。
すぐに現場の運営主体を探してもらい、駄目元で交渉し、見事、ここを使わせていただくことになった。
そしてここに今回のイベントにご参加頂いた、Avexさんのシンガーをこの舞台に上げることができればと思っていた。そのことを4月にAvexの方々をお連れした時に素直にお伝えした。
一緒に Nexgenを盛り上げてくださっているAvexの史上最年少役員、加藤さん、有田さん、小川さんが頑張ってくださった。
そして様々なアーチストの中から、Avexの秘蔵っ子、ビバリーさんの起用が固まったのだ。フィリピン出身で、英語も話せるので、この場にふさわしいだろうと・・・。
黄色のワンピースに身を包んだ小さな女性が、MCを務めるハーバード大学の才女、Grace Panの紹介で舞台に上がった。
フジテレビの ドラマ、「CRISIS 公安機動捜査隊特捜班」主題歌に若手としては異例の大抜擢をされた歌姫。驚異のハイトーンを持つフィリピン出身の歌手という前置きは事前に聞いていた。
僕もバンドをやっていたので、ちょっと音楽にはうるさい。ちょっと上手いぐらいではなかなか感動しない。
動画で事前に歌声も聞いていた。
実際はどうなのか?
Tell me Babyという曲が始まった。
曲が始まる10秒後にいきなり、スーパーハイボイスが炸裂した。そう、炸裂という言葉がふさわしい。
会場がどよめいた。
そこから、会場はビバリー一色に塗り変わった。
会場全体には、4、500名の人がいたと思われる。金曜夜ということもあり、Nexgen参加者以外の人も、食事やドリンクを楽しんでいた。
そこにビバリーの歌声が響き渡り、誰もが舞台に釘付けになった。
あ
たりのテーブルの客を見ていたのだが、食事のフォークがピタリと止まった。
背筋がゾクゾクするというのはまさにこのことを言う。
そこからは、少しずつ、皆が体でリズムを取り始めた。フォークを置いて、手拍子をする人たちも次々に現れ、会場中がシンクロを始めた。
アメリカから連れて来たハーバード大学の学生達も舞台下でノリノリになって踊り出した。
盛り上げるために踊ってくれ、なんてお願いしたことはない。自然に体が動き出し、自然に声が出てしまう、そんな感じだった。
するとどうだろう?
ビバリーがマイクを持ったまま、舞台下に走り降りて来てくれた。観客に混ざって一緒に歌い出したではないか・・・。
みんな大喜びだった。
3曲の歌を歌い、最後は地元のバンドと一緒に歌ってくれた。
曲はジャーニーの「Don't Stop Believin' 」。
アメリカのドラマ、グリーでカバーされ、再び、若い世代にも広く知れ渡るようになった曲だ。
この曲をリアルバンドで歌い始めると、アメリカの若者、シンガポールの若者、そして日本の若者を含む、アジア中の老いも若きもが一緒になって歌い、踊り始めた。
みんな極上の笑顔であった。
ここでNexgenというイベントが、シンガポールで成功したことを確信した。
ユニバーサルランゲージを持つ、エンターティメントの力が、僕らのイベントに大いなる花を咲かせてくれた。
僕らがアメリカの学生や日本のスタートアップを連れてきたから、そしてAvexが最高のシンガーを連れてきてくれたから、そしてシンガポールサイドが最高の場所を提供してくれたから、この場所が最高の場所になったのだ。
まさにオープンイノベーションの力が結晶化した瞬間であった。
全てが終わり、皆がこの数ヶ月の労苦を労って、自然とハグしあった。美しいハグであった。
終了後、ビバリーは我々のところにやって来てくれた。小さくてとても可愛らしい女性だった。
さっきまでのあの声量はどこから出ていたのだろう?
しばらくお話をしたが、とても謙虚で、気持ちのいい女の子だった。会場中を笑顔にしてくれてありがとうと言うと、「私達、フィリピン人は、いつもハッピーなんですよ」と・・・。
そう、その通り!僕が知ってるフィリピン人は皆、明るくて屈託がない。
そのフィリピン人のDNAで、あの歌声。
会場中がハッピーにならないはずはない。
そんな素敵なパフォーマーを見つけてきたAvexもすごい。
そして僕は思った。
多くの日本人も多くのアジア人もまだビバリーの頃を知らない。おそらく、この文章を読んでいるあなたも、ビバリーの生声を聞いたことはない。
しかし、ビバリーの才能はもっともっと世界中に知れ渡るべきなのだ。
エンタティメントに身を置く人たちは、もっともっと世界に挑戦して頂きたい。
ビバリーは明らかに世界に通用する。
今、目の前にいる観客がそのことを証明している。
しかし、エンタテインメントの世界は普通のビジネス以上に難しい。当たるも八卦、当たらぬも八卦。トヨタが車を売り込むような正確さで、世界に売り込む術を、日本人はまだ明確に持っていない。
「J Pop?聞いてないなー。K Popならうちの娘が大好きで良く聞いてるわ。私もそのおかげでK Popの大ファンになったの」
このイベントの開催前に、一緒にNexgenを主催してくれた政府関係機関の女性幹部の言葉だ。
ちょっと悔しかった。
しかし、昨年、一躍、世界中の人に知れ渡ることになったピコ太郎はAvexの所属だ。
つまり、日本から世界的な大ヒットが生み出すことは、不可能でもなんでもないのだ。
■世界の舞台で
僕が最近、付き合いのある、日本人ストリートパフォーマーの中には世界ランクの人たちがゴロゴロといる。
来年開催されるユースオリンピックで、初めて、ブレィクダンスが競技種目となる。
ここで金メダルが期待されているのは、何と大阪の高校生、Shigekix Nakarai Shigeyuki(シゲキックス)君なのだ。
シゲキックスは小学生の頃にダンスを始め、中学生の頃から、世界大会にどんどんと出るようになった。
彼とは、この春、一緒にイベントをやらせてもらったのだが、その時もイベントが終わると同時に中国へと向かって行った。
フェイスブックで繋がっているのだが、毎月のように、世界中のどこそこの大会で優勝したというポストが飛び込んでくる。
最近、英語の投稿が急増している。
●Shigekix Nakarai Shigeuyki https://www.facebook.com/shigekixnakarai.shigeyuki?fref=ts
そう、これがとっても大切なんだと思う。
世界で戦うためには、早い時期から世界の舞台を渡り歩くべきなのだ。
そしてユニバーサルな演技力、どの国の人にも通用する技術を磨かなければならない。
これが多くの日本人に足りていないと思われる。
パフォーマンスの世界でも、ビジネスの世界でも同様だ。
僕は企画、伝達、説得においては、世界中のどこにいっても、そこそこ戦えると思っている。
それは20代の頃にアメリカの大学で鍛えられたからだ。学生としてではなく、教師として3つの大学を渡り歩いたので、それこそ世界中から集まってきた学生を満足させる必要があった。
これを体験することで、日本人ではなく、地球人を相手に教える技術を意識するようになった。
つまり、どんな人種にでも通用する技術があるのだということに気がついたのだ。
Shigekix君は、恐らく、そのことに気づいている。だから世界に通用するようになったのだ。
幾つになっても遅くはないと思う。
もっともっと普通に海外に出ていくべきだ。若者もビジネスパーソンも主婦も子供もだ。
外国人を相手に自分の企画を説明する。外国人を相手に物を売る。外国人を相手に交渉をする。そうした経験を積めば積むほど、これからの世界では生きやすくなっていく。
しかし、そんなに大きく構える必要はない。
今は、アメリカ人でもシンガポール人でも世界中のあちこちの人が、同じ日本のアニメを見ており、同じYoutubeの映像を見ているのだ。
だから、先ほども、GleeのDon't stop Believin' のような共通言語を一緒に歌いことができたのだ。
我々が知らないうちに世界はどんどん近づいているのだ。
外国人といえど、接点は十二分にある。
必要なのは、前に踏み出す勇気と実践の数のみ。
ビバリーは、フィリピンを飛び出し、日本で挑戦しようとしている。ビバリーは1994年生まれの23歳だ。ビバリーにできて、なぜ我々にできない?
最後になるが、今回、Avexさんが、ビバリーという稀有のシンガーをNexGenに参加させてくださったことに心から感謝したい。
このオープンイノベーションの可能性を、身をもって示してくださった功績は大きい。
イベントを終えて、Avexさんとともに、もっともっとこうした稀有のシンガーを世界に売り込んでいくお手伝いがしたいと思った。
オープンイノベーションの力があれば、それが可能になると思った。
それでは最後に、興奮、冷めやらぬ会場の感覚を味わっていただくために、以下、ビバリーのYoutube映像を紹介しておきます。
言っておきますが、本物は、この映像の100倍ぐらいのインパクトがあります・笑。
でもどうしてもこの感動を味わってほしいので、ここにURLを貼っておきますね。
●ビバリー・Tell Me Baby https://www.youtube.com/watch?v=1d9IgoyQdOE
是非、いつか僕らと一緒に彼女の歌声を生で聴きに生きましょう!
来年あたり、アジアのどこかで・・・。