今日はお休みだけど4月のイベントに向けてやることがいっぱいあってずっとミーティング。
ぶっ通し7時間やって、なんとか終了。さあご飯でも食べなきゃと妻と麻布十番へ。何気なく歩いていると京都お好み焼きの文字・・・。
こんなとこにこんな店あったっけと思いながらも、何か惹かれるものがあり、入ってみることにした。
カウンターに5、6人座れて、奥に座敷が二つの小さなお店。
で、食べてびっくり、大当たり!なかなか関東ではお目にかかれない本物のお好み焼き、焼きそばだった。
いや、関東のものが偽物だといいたいわけではない。関西人が好きな味がなかななないという意味だ。さらに、ここの味は関西風というより、その上をいく、独自の京都風という味わいだった。
さっぱりしているけど旨味がある。でもえらそうではない。ちゃんと庶民の味なんだけも、しっかりと奥行きがある。
だからいろいろ食べてもお腹いっぱいにならない。京風お好み、焼きそば、サイコロステーキをぺろっと頂いた。
まだ食べたいという妻が山芋のチーズ焼をオーダー。これもペロッと完食。
まだいくつか食べろと言われてもいけそうだった。
「去年の末に店を出したんですけど、今日まで誰一人料理残しませんね。みんな完食ですわ」
店のお兄さんが親しみやすい関西弁でお店の成り立ちをお話ししてくれた。
聞いてびっくり、京都で30年続いたお好み焼き屋さんが初めて東京に進出してきたのだという。
「お母さんがね、決心したんですよ。」
指差す向こうに、お母さんが立っていた。お母さん、漬物をきりながらぽつりと話しだした。
「もう何十年も京都で同じ仕事してきてね、このまま終わってええんかって思ったんですよ。歳?今年70になるんです。それでね、70になったとこでね、決心したの。東京で勝負してみよって・・・。」
すごいなあ。70でそんな挑戦するってなかなかできることじゃない。
「お母さんね、東京なんかきたことなかったんですよ。それでもやってみたいって・・・」
あきれたように笑いながら話すもう一人の息子さん。そう、息子さん二人と親子三人でこの店をきりもりしているのだ。
麻布十番というのは日本の飲食会でもトップレベルが競い合う場所。そこにいきなり店を出すというのは相当の意思決定であったに違いない。
「京都の店はね、もうすぐたたむつもりなん。だってそのつもりでやらんと絶対成功でけへんと思うの。退路を断つというかね・・・。そのぐらいの気持ちでやらんと東京で勝てるはずないしね。でも味は自信あるの。」
お母さんがそういうと、息子さんがこう続けた。
「こっち来てね。お好み食べてみたんですよ。でもね、三人ともほとんど残しました。こんなんお好みちゃうってね。だから味は絶対勝つ自信あります。」
それはほんとにそうだと思う。この味をきちんと守れるのであれば十分生き残っていけると思う。
「そやけど味守るのも大変なんですよ。お母さんが絶対、こだわらなあかん言うて、素材を全部京都から送らせてるんですよ。このそばもわざわざ京都の麺屋にゆうて特別に作らせてるんです。だから高くついてしゃあないんですよ(笑)。でもあかあさんがそうゆうから、僕らもそれをまげんようにしてるんです。」
そう、それだ。
僕はにっぽんの宝物をやって、全国の飲食のプロにお会いするようになってきたが、どこにいっても本当に素晴らしいなと思える人は、こういうこだわりを持っている。
こだわりがあるから、「抜きん出ている」のだ。
「なんかね、東京に来た時は寂しくてね、なんか東京の人はみんなイケズしてるんちゃうかって思って・・・。そう、わかってるのよ、そうやないって・・・。でも初めて京都出たし、不安やったんやろうね。うまくいくか心配やったしね・・・。でもね、時間たってきたらええ人もいっぱいいて・・・。お客さんみたいな人が来てくれたら私らも嬉しいわ。これ、食べて・・・」
生のネギを手づかみで皿に持ってくれた。京都の九条ネギだという。
これもおいしい!
「僕らね、無理にお客さんにこびることはせえへんのですよ。気にいったお客さんにしかネギも出しません。」
そう言っていただけるとこちらも嬉しくなる。
また来たいな、これから何回も来るお店になるなって思った。
「まだまだ東京わからへんから、よかったらこれにこりず何回も来てね。色々教えてほしいわ。」
喜んで!
というわけで、70歳で人生を再発明しようとしているお母さんと親孝行な息子さん(お母さんの夢をかなえるために仕事をやめていっしょに東京に来た)に出会いたい方は、麻布十番、商店街にある「よっちゃん」に行ってほしい。
味とホスピタリティ(ただし気に入ってもらえれば)は僕が保証する。
ここにもにっぽんの宝物があった。
●よっちゃん